腐乱死体のメランコリ

ぼくは腐った死体
ストーブの前
60キロの血と水を
持て余してる

おなかは温まって
たくさんの微生物（いのち）になって
溶けていく
60キロの孤独

漂う臭気になって
旅をする
金属の扉を抜けて
気流に乗って

見つけてよ
部屋の隅から
ほこりと髪の毛
ね

生きた証

何にもしたくないと
携帯を無視し続けた
ね
ねぇ

ぼくだけど

いまさら、と、なじられて
今だから、と、泣き笑いして

腐った死体の
腐った　手
床にしみこむ
夢と未来

見つけてよ（でも、見ないで）

わかってくれるかな
君は

（60億の狂気の　贄になる）

腐った死体
60キロの血と水の
重く　熱く　臭かったこと

こんなにも
苦しかったこと！！

「空気を読め」

そこに書いてある透明な文字を
読み取ろうとして目を凝らした
何か　きらきらした
何か　痛そうなものが
ある気がして
歩けなくて
棒立ちの姿勢のまま

誰かの気持ちが書いてある
どうすればいいか書いてある
それは魔法の脚本らしい
みんなには見えているらしい

投げつけられた言葉は
かくれた物語の暗い一部で
たぐりよせた先にきらめく
めでたしめでたしがあって
きっとあって
見えないだけで

書いてある透明な文字を
読み取ろうとして目を凝らした
涙が浮いても
見えるのは百億の色とかたち
そのものであるだけの色とかたち

透明な膜に覆われている

ばかやろう

怒鳴られてはっとした


今

世界に


さわれたみたいだ

No Man's Land

さよなら
終話ボタンを押して
街は地雷原になった
あの子とみたものばかり
ビルも　看板もイルミネーションも

武装しろ
駆け抜けろ

カチリ

動けなくなる
粉々になることと
欠けたまま生きること
どちらがましだろう

さよなら
錆ついた鉄条網
青い蝶が止まる
心が武器を置き
未練に草が生えても

カチリ
まざまざと思い出す
傍らのあの子の気配

はばたけ
忘却の翼

さよなら
吐きだした種から
緑の木陰が育つ
来たれ平穏
そのときは笑いたい

metamorphosis!

metamorphosis!
（てん）
悲嘆は美談に
感傷は頑丈に
ｱｳﾌﾍｰﾍﾞﾝ!
抱きしめる腕が
ばってんの形を
していることだよ

metamorphosis!
(ととん）
さなぎからト短調
間違えた！と旗を折る
Agnus Dei!!
神さまを少しかじって
虫歯になった日のこと

metamorphosis!
(じゃらん)
次の世界あたりへ
螺旋描く種から花へ
リオデジャネイロ！！！
燦然、
世界の愛を浴びて
踊り続けることだよ


METAMORPHOSIS!!!
未来へ
でんぐり返しで進むことだよ