森のピアノ

わたしはぴあの
森のぴあの
つやつやの黒に
木もれ日をうつす

雨になれる
風にもなれる
雪のように
しずかにもなれる

あなたの　ゆびがふれるだけで

あふれだす音は
いのちにもなれる

ぺだるが　きぃと軋んで
深呼吸する

わたしはぴあの
森のぴあの

回送電車

回送電車
もう誰もいないのに
座席はまっすぐ前を見てる
ぽっかりと四列縦隊
黄色い蛍光燈から
空虚があふれ出て
追いかけてくる

ハーメルンのあいつが
目の前にあらわれたなら
ついていこうと思う
大地の割れ目へ

一つのことを5分間考えられないねじが外れるように眠くなる言葉は拡散して拾い集めるのもおっくうだばらまかれたドロップスが色をなくし好きなあの曲の倍音が聞こえなくなり


こうやって僕は死ぬのか


役割は終わったと
赤地に白抜きの文字で書かれ
すこしも顧みられずに
4列縦隊で地下へ帰る電車の座席。

ばいばい、ミサイル

ばいばい、ミサイル
ぼくはもう
壊れてしまいたいよって君は泣いたね
何ひとつ作り出せない
何ひとつ熱くなれない
生きている意味なんてないんだって

ばいばい、ミサイル
ぼくを生んだ
技術者を呪うよって君は泣いたね
道筋も選べない
壊すだけの生だと
信管が腐ってしまえばいいんだって

ミサイル、
名も知らぬ人を
殺して死ぬだけの運命さ
だけど、ミサイル
知ってたかい、
ある科学者は信じてたよ
君のそのからだにつまってるものが
人類にとって２つめの火だと

それを聞いてミサイル、
君はさらに泣いた
しあわせのための智恵を
こんなにしてしまったぼくのありよう
こんなにも冷たい金属のからだ
死を振りまくのを待つだけだなんて

ばいばい、ミサイル
ぼくはもう
消えなくちゃいけないって君は泣いたね
たった一つの信号を受け取り
射出口が空を丸く切り取った

そうして君のきょうだいたちが
世界のいろいろな場所で
同時にたったいちどの生と死を生きた
ミサイル、
きっと君はまた泣いてるのだろう

でも
知っていたかい

悪いのはぜんぶ
ぼくらなんだ
悪いのは　ぜんぶ


ごめんね、ミサイル
泣かないで、ミサイル


・・・ばいばい、

・・・・

Cirrus 10

電子分解された秋という季節
#00FFFFで色を語る
君ははるか成層圏で手を
巻雲のように最後の声がたなびく

-CirruS-

つまらない感傷だと
一笑に付してほしい
ピコピコと騒ぐ信号機の
寂しいメロディーのせいだと
けれど私たちのCyanは
黒の電線で区切られているのか
繋がれているのか

今年初めての北風に運ばれてきた
枯葉と灯油の燃える匂い

この夏をどうしても無理だといって
年下の女の子が命を絶った
秋はちゃんとくるのに
透き通った翼に乗ってしまった

駆け足で過ぎていった夏
次の仕事の締切日と
昼休みの終わり時間を気にしながら
8.15も9.11も思い出さず
迎え火のひとつも炊かなかった

-CIrrus-

目に痛い空を刷毛でかくして
地下鉄の入口へ急いでいる
去っていったものたちが
あそこで待っている気がするのだ

ああ

長袖の肩がもう寒い

うたたね

ひかりがあふれる
結晶化する
午後、

わたしがわたしであるから
あなたに会えた
ジャンプでもしたい気分だ

世界がこんなだったから
あなたに会えた
星の頭をなでてあげよう

うたたね

覚醒し拡散する自我

生きていること