短歌ドリル ―猫の絵文字―

1. 透明な羽の降る朝　しあわせなしあわせな一日をと思う

2. 一列に並んで待っているけれど違う人を待つ飯田橋駅

3. 「好きです」を換算すれば二億円きみの会社を買収できる？

4. 香水をつけ忘れてる会うまでにせめても甘い紅茶を飲もう

5. この距離がちょうどいいのにこの距離はさみしい 猫の絵文字を撫でる

6. 一つずつ飲みこんでいく　わたしには緑は重い青はまぶしい

===========================================
6首。

短歌ドリル ―富者のサラダ―

1. 踏み外すくらいがいいと教えたかった倉庫の隅のへいきん台は

2. アメフラシ涙だけではないだろう なすすべもなく触れられていて

3. 好きなのはあなただ、肩を揺すってもシーザーサラダは富者の食べ物

4. 八分音符の旗を揃えて書く人の月に関する曲を愛した

【題詠blog2014用メモ】
028:塗/
髪の毛はぜんぶ黄色で塗っていい縦長の目の巻き毛の少女

029:スープ/
バス停のコーンスープは地球まで帰れるための補給物資だ

030:噴/
教科書をかばんに入れる　噴水の中から見てるみたいな日々だ

====================================================
4+3首。

短歌ドリル ―素材―

1. 薄っぺらい木のマドラーで栞してコーヒーと夏の香を後にする

2. 聞こえてる？まだ透きとおる青色の朝のはじめの物語する

3. 天体の巡りとともにふかぶかと暖かくなる 手を振っている

4. 君の手に草の穂のごと従いてエンドルフィンの偏光よ今

5. 頼むからなかったことにしないでよフリージアの香りもろとも

6. 優秀な素材ですから曲げられて熱に強くて無口ですから

================================================
6首。寄せ集め感。

短歌ドリル ―水練―

1. ときどきは引きずるけれど必要だトレンチコートの紐のことだよ

2. あの頃は人形だった　赤い実が地に落ちるほど語りはじめた

3. そうしたらあなたと行こう　的確に水のありかを知っているので

4. 散らかったタタミの上で平泳ぎし続けて得たような居場所だ

5. あの赤いサンドバッグは最後まで私の指を傷つけなかった

6. 花粉症マスクしたまま回ってる優しい人の優しい星だ

7. 黒海にも桜はたぶん咲くはずでシートの場所がわからなくなる

8. 青ぞらのレジャーシートのこんな日も人は領土を争っている

================================================
8首。7はお花見吟行歌会で提出させて頂いた歌。8はその没作です。
歌会は楽しいですね。
あんなに自由に話せる場所があるなんて、奇跡的だと思います。

短歌ドリル ―夜の流砂―

1. Haで吸ってRu、と留めていた欲情の土にぞくりと染みとおる水

2. 五分咲きを見られた桜よろこびに捩れてさらに色を濃くする

3. でもあたし求められてる鮭の身は食べられやすく作られている

4. はんびらきで待っているからわかるよね？あたしのことはエサと呼んでね

5. 自覚して侵されていく　夜の流砂に落ちてく光る小枝のように

6. 低反発素材でできた身体です　立って歩いて笑ってるだけ

7. 水槽を壊してしまう海豹の真っ黒な目で愛を聞きたい

===============================================
7首。エロ！