短歌ドリル ー置いていくくまー

1. 客の来る半時まえに押し入れに取り出すためにしまうものたち

2. 闘志にはかかわりなくて牛乳のなかでぐずぐず溶けてく苺

3. 出張の時はパジャマは持たないし生きていくのにきみは不要だ

4. きみのその指にひかっているものは炭素だ、だから安く売ってよ

5. さくらんぼ半分かじった中にいて朝を待ってる地球侵略

6. "Passenger…" ― あなたと同じ名を聞いて反射のように唾を飲み込む

7. フライトの朝には客を待つように部屋を揃えてしばしお別れ

8. 両親より花の写真を送られて今年も電子墓参りする

9. 出張に連れていくくま空港の緑のベンチに置いていくくま



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9首。

短歌ドリル ー制度のことー

1. 看板にぶつかりながら町を行くこれが覇道というものならば

2. 任せてよエレベーターが開く前に混み具合を知る第六感に！

3. スプレーでプールの塀に書かれた理由"未来が見えた"

4. 縁側の立ち入らないでくださいの紐はもう意味のない世界ね

5. 天国に行けないほどの罪だとはしないよ、たかが制度のことだ

6. 午後六時ピンクチークに青黒いマスカラ、 隠したいものはなに

7. 透明な電車が止まる乗客も透明になりその先へ行く

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7首。来週はお休みの可能性高。

短歌ドリル ―青歴史―

1. (美しくひらかれてあれ)毎夕に水をいただく苗木と思う

2. 太陽は中天にあり行き先を決めかねているような初夏(はつなつ)

3. 3Dプリンタで家を建てるでしょ？かたつむり、月を私有地にして

4. 真っ黒な石を飲みこみもう水に浮けないけれど生きていきます

5. これは青歴史黄歴史銀歴史少しは黒も混ざってるけど

6. なら君がふたり分愛してよ、そう無理ならキスを二回でいいよ

7. ほら歌にすればいいよと触れられてティラミス味のキスをしている

8. まだいけるラップがけした渇望で駅の階段闊歩していく

9. 死ぬことを考えすぎた季節抜けたんぽぽ酒がまあるく甘い
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9首。頻度を増やさなくっちゃってば。

短歌ドリル ―にょろにょろ―

1. その紅茶の経た曲折を知っていて揺らぐ両足境界に立て

2. 蹴りたいのは自分の背中 海風のまるい地球の極東にいて

3. のび太くんもセーラームーンもナナもハチも追いこして以下続刊 こわい

4. 次回くらい減らしましょうと言いながらせんせい一年経っていますよ

5. 人並みの心がほしい彫像に睫毛があって滴がひかる

6. ファシストと呼ぼう、あなたの中にある価値に疑問をもてないために

7. フィリピン産バナナの皮を捨てるときインスタントな旅の思いで

8. ひさかたの夢の帰り路 他愛ない守りのようにともにありたい

9. わたしにはわたしが重いときがあり叩いてほしい柳の枝で

10. たくさんの罪のないニョロニョロたちをニョロニョロにして旅をつづける

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10首。にょろり。

短歌ドリル ―ハイキー―

1. 父親は狼でした山に咲く桔梗を食べて遠ぼえをする

2. この人は明日にも死ぬかもしれずアスタリスクをいけにえにする

3. 何万のミクロの鳥が指にいて触れあう指へ飛んでいきます

4. きみとぴたり同じピッチで奏でたい442ヘルツの恋

5. 抱かれてた時間ぶんだけ温もってハイキーになる世界を愛す

6. 「今朝の5時女の子を出産しまし」きみが始める新しい国

7. 向き合ってチキンタツタを食べ終わり堕転をゆるす五秒の無言

8. 空の上の青へ溶けてくビブラートついていこうと胸を震わす

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8首。ひさびさ。