短歌ドリル ―剣の歌―

1. 風が鳴るそろそろ君があの角に立っている気がするから行こう

2. ボトムズとソックスの間のことをふるさとと呼んだ日々もあったね

3. 君が語る星の話は天の川　手首絡めてきょうは眠ろう

4. 一つめの鎖ちぎって語りだす 暖めてきた夢の話を

5. 光なき地底の道をひたすらに僕に剣(つるぎ)を貸してください

6. 火とかげの堅き顎(あぎと)と対峙する君の力へ、早口言葉

7. 二つめの囲いを抜けて打ち明ける僕のとさかにまつわる秘密

8. あこがれは黄金(きん)の林檎のかたちして 確かに君の梢にひかる

9. 振り向けばいつでも君に会えたあのベンチを捜し銀糸の道を

===================================================
9首。傍にいてくれた人へ。

短歌ドリル ―うたたね―

1. あたたかい沈黙はあり日は落ちて後部座席はうたたねをする

2. 眠りかけたとき右腕に踊る影オレンジライトのいつわりの夜

3. 塗りつぶすのにもいろいろありまして墨や雪よりおすすめは虹

4. 引きだしにしまってあった思い出が暗黒物質（ダークマター）に置き換わってる。

5. 君というひかりに触れて思い出す　ものに名前があるということ

6. ほんのりと豆電球を光らせるためにレモンは血を流してる

=================================================
6首。苦しかった。

短歌ドリル ―先端がふわふわのミサイル―

1. 甘ったれた戦争をしよう　リーサルもノンリーサルもこんぺいとうで

2. 半熟のポピュリズムから派生したコーラフロート明日はどっちだ

3. きみがもし狼煙を上げるつもりならアルファルファと遊べ世界は広い

4. 憎み合うきのこ/たけのこ　どちらにも一口分の正義はあって

5. パンくずも持たずベンチに座ることをゆるそうという鳩の寛大

6. 好きなだけ殺伐として　カスタードクリームがもう出来上がるから

7. 真剣白刃取りをきめてよく見れば先端がふわふわのミサイル

===================================================
深泥ヶ池短歌大学(@midorogaikejc)さんからtwitterで頂いたお題
「先端がふわふわのミサイル」による7首。楽しかった！

短歌ドリル ―さよなら、りりこ―

ポップコーンを一粒そっと鉢植えにうずめるようにりりこのことを

　　ひなたみず徐々にぬるんでゆくあたり りりこはずっと町を見ていた


　　　　旅にいくなら連れてってキャラものの時計をつけるような気持ちで

　　　やさしさは光と水のようでした いつか大きな椰子になろう、と

噴水の下はいつでも湿ってて涼しいすみか　おしゃべりしよう？


　　　（のぞまれる場所それほどでもない場所）りりこはついていっていいかな



　愛されること　必要とされること　孤独の貌は見たくなかった



　　　　　　間違えた箇所もわからず不合格通知を受けてぽかんと座る

　　りりこという面積を切り取らないで立体に糸を巻かないで（悲鳴


心臓に刃あてればつめたくてみどりのどろがあふれる、はなれて


＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


・・・これはもう毒の詰まった砂袋見分けがつくはずないので見ないで

　　あたたかい水に棲んでたあの頃の「くまのまーく」をつける、泣かない

"さよなら"をおぼえるために何度でも自分の腕に文字を書いてる

・
・
・

いくつもの別れをなぞり星月夜 死よりも遠くさよなら、りりこ




===================================================
歌は飾る。歌はすべては語らない。
でも、歌は嘘をつかない。・・・たぶん。

これを最後にします。

2014.01.18修正メモ
りりこという面積を切り取らないで立体に糸を巻かないで（声

短歌ドリル ―五線紙―

1. 贈り物を手渡すようにおはようをこれから毎日言えたらいいね

2. 宇宙から来たのを悟られぬように手を痣にして打つタンバリン

3. ちぎれ雲スマホかざせば降りてくる冬を分け合うあてはないけど

4. 五線紙にていねいに書くト音記号　みんなとうまく響けるように

5. 熱も意味も未来もぜんぶ欲しかった⇔一緒にいればそれで良かった

6. 歩道橋を渡っていこう冬空に落書きしてく幼い音で

7. （G音は潔癖すぎる）（D音は優柔不断）（全休符）（タイ）

==============================================
7首。おんがく。