ねむれ

その　ゆめの　なかに
あくまが　くるよ
ぴんくの　きりと　いっしょに

だいじょうぶ

ゆめのあくまは
きみの　もの
きみが　いいこで　いるために

どすぐろい　みどりの　へどろ
ぜんぶ　すてて　くれる

ねむれ　ねむれ
わるい　もの
ぴんくの　あくまが
やってくる

ぴんくの　あくまが
たべにくる

ことば

もっといい言葉があったはずだ
わたしの知らない
６０億人のあたまの中には
こんな思考を表わすのに


言葉は武器だった
思い通りにならない
言葉は食料だった
美味かったり不味かったりする


あの子が拙く綴った文字
誰もあそこから生まれたんだ


わたしも



もっといい言葉があったはずだ

身体の底が震える
こんな気分に

Ｒｏｃｋ Ｍｏｒａｔｏｒｉｕｍ

アイツは夢ばかり見てんだ
両目に包帯巻いて
ベッドに縛り付けられた
自分でそうしたんだ

また別のヤツの話
幻の光を信じてる
馬鹿みたいにダッシュしてる
ビーサンのつるが切れて今は裸足だ

阿呆だな
どいつもこいつも
嫌ンなる
俺なんだ

　　　　天窓を破って夜に浸った
　　　　太陽が起きる前に
　　　　喉からあふれた赤で世界を染めた


アイツは何でも壊したがる
関係の欺瞞に理不尽な規則
必死に積んできた自我の城壁

アイツは踵に羽根が生えてる
一跳びで限界を超えた
それを睨みつけたのも


てらいない翼　妬みの蜘蛛の巣
嫌ンなる
どれもこれも
俺の中だ

つまんねぇ　くだんねぇ
俺の一部だ


ギターの和音が切り裂いた空
歌が染み込む
今が最後のモラトリアム
全てをかけてリズムを刻んだ

右手の話

今日は　小指が腐りました
冷蔵庫で萎びていくキュウリ
小指が腐りました
もう　笛は吹けません

今日は中指が腐りました
彼女の気遣いを偽善と呼び
中指が腐りました
上手くお箸が持てません

今日は親指が腐りました
道行く背中から毒が突き刺さり
親指が腐りました
あなたに手紙も書けません

それから３日かけて
人差し指が腐りました
爪の先から　ゆっくり　じっくり
人差し指が腐りました
薬指だけが残りました

一本だけ残った薬指は
驚くほど良く動きました
ずっと飼っていた絶望が
まるで乗り移ったかのように


結論から言って
薬指は腐りませんでした


ただ　心の臓が
気づいたら死んでいました

無気力ウインドウ

この窓は海を切り取ったんです
サカナがときどき通り過ぎます
わたしを横目で見ていった
ナポレオンフィッシュ
おでこの下の丸い瞳…

　…馬鹿にしないでください
　ちゃんと生きてるんですってば

この窓は空を縁取ったんです
晴れた午後なら爽快です
入道雲のがしゃどくろ
無言でこっちを見下げています
うつろ うつろう うつうつとした…

　…ごめんなさい許してください
　今立ち上がろうとしたんです


上手に生きるとはなんだろう
窓のこちらはひとりの部屋