短歌ドリル ―銀色のFin―

1. 好きなとき好きな口笛吹けるよう手を繋ぐほかはだまって歩く

2. 銀色にかがやく"Fin."を見たあとの風吹きさらすベランダに立つ

3. 好きなことをしていていいよわたしならくすりを飲んで寝るだけだから

4. 黒い字で病気の名だけ書いてある白い看板ひかる看板

5. 窓際で泣いてはだめと言ったのにきみはそんなに口笛を吹く

6. 背が伸びて地面は遠くなったのに空はちっとも近くならない

7. 久しぶり。溶けかけの境界線は色を濃くしてまた歩きだす

8. ハローキティのジャージにクロックス履いて悪いか、わたしこの町が好き

9. ストローで吸っては混ぜるハニーラテこの頃ついにしっくり甘い

10. ジムを出て夜が脚本だったからスマホを握りつぶす勢い

11. おばさんに肩を押された、輪郭が祖母に似ていた、花を買おうか

11-b. 我が肩を圧せる老女の顎つきの祖母に似ており　花屋へ寄らむ

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11首＋α。tweetしたものたち。

短歌ドリル ―ゆめきのこ―

1. にんげんの足は二本じゃ足りないねずっと背中にもたれていたい

2. 肉用のまな板を横抱きにしてかるく揺すってやる熱帯夜

3. 生きやすいかそうでないかで分けており人面岩のジュースを啜る (7/25『ジュース』)

4. さっきまでコーヒーだった血がいまはクエーサーです 深夜営業

5. ゆめきのこ一足ごとにかがやかせ二十三時の二番ホームを

6. あたしなら雪の女王になるよりは都会へ行くよ 青いドレスで

7. 何一つ大人になった気のしないポストに届くゴールドカード

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７首。6はジジネタンカ投稿歌の改作（というか、改作前）。
3はうたの日提出歌。

短歌ドリル ー淡水色ー

1. オフィスとは密林の謂い首がもう痒くて痒くて痒くて　じきに

2. 八階の酸素が全部とうめいなみみずになってのたくっている

3. 記憶から入道雲があふれそう淡水色のつけ爪をする　（7/16『水色』）

4. 八月の吹雪のような恋に会いまた暗やみでシャワーを浴びる

5. 丸っこく手触りのいい歴史しか愛されないと泣くかつ江さん

6. かつ江さんケンタのチキン１ダースあるから食べて、カエル、君もね

7. 夕まぐれ挑む目をした野アザミのかんむり薄く血を滲ませて

8. 膝合わせシロツメクサのかんむりを編んだ緑の指をそのまま

9. 台風がきているというニュース見て気のせいだよと電車に乗って

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9首。5,6はジジネタンカ（お題『かつ江さん問題』）への投稿歌。
３はうたの日で初めての花束頂きました！

短歌ドリル ―カーテンー

1. 一日を誰とも会わず夜になり摘まめば崩れてしまうクッキー

2. カーテンの隙間合わせた手を見れば前より少し透けたようだよ

3. ありふれた事件ありふれた名探偵ありふれたそれを見ている孤独

4. 窓の外の夕映えを躊躇ううちにわずか射しこむ光も消える

5. （単四の四つ入りを二つ）ほんとうはForce Majeureに憧れている

6. 外庭に芝刈り機押すその果てのどこかに人の住める星がある

7. 寛容と朗らかさもて前庭に枝切りばさみを振るう おはよう
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7首。７はそののち歌会（お題『庭』）提出歌。6はその没作。

短歌ドリル ―オールフリー―

1. 赤くなる頬ゆっくりとみたされてオールフリーを飲むということ

2. ひも解けば過去は赤橙黄緑青藍紫すこしも恥ずかしくない

3. 5W1Hにて記録して愛が銀河を染めるプロセス　（題『何』）

4. 雨が降る　最期はひとりきりだからあなたがだれの夫でもいい

5. あさがおの枯れた日向で雨水を湛えて褪せてしまう象の目　（題『無』）

6. 白シャツに麦わら帽の老庭師が鋏ふるとき西暦終わる

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6首。３はうたの日、５はそののち歌会投稿歌。