短歌ドリル ―サースティサーティ―

1. アスファルトの上にいつから擦りきれて潰れ捩れたいろはすの瓶

2. ハンプティダンプティのリズムで言ってサースティサーティ塀にのぼった

3. 鉄よりも呪われてあれ大聖堂で赦されるための呪いが足りない

4. 「聴力を損なう恐れ」の警告を無視し最大音量で聴く

5. 旋律を禁じてしまえ君の声でドの音がいちばん美しい

6. 青が憎い　ポカリのラベル剥がしてもオランジーナが立ちふさがるよ

7. サースティサーティは治せない傷を負いたくて歌う夜の乃木坂

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7首。やりすぎ？まだまだ？

短歌ドリル ―疑問符の形の人―

1. 薄青い暗がりで前を歩いてた疑問符の形の人、覚えてる？

2. 競技者はやめたんですか解説の席の眩しい名前を見ている

3. あなたが年を取るなんて裏切りだ　世界は優しくなったでしょうか

4. 青い鳥が本当に青いならそれは人に撃たれぬための擬態ね

5. ここはどこ ここはどこ ここはどこ ここはもうとりかえしのつかない森よ

6. 腐葉土のぬくみ（幾千もの死）からハンバーグとか生えてくる森

7. ぬくもって袖のはじからぽたん雪ぽてるにかえるとぽっとするね

8. 車椅子の少年が紙飛行機で "Love and curse and hug to you！"
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8首。最近ショックだったことについて。

短歌未満 ―ある時は―

(中島敦『和歌でない歌』による習作)

1. ある時は檸檬唄ひし基次郎我に憑りおり街ゆく心地
*憑り=より

2. ある時はレエルモントフ帆をあげて蒼海遠く何をか求める
*蒼海=そうかい

3. ある時は牧水慕ひ幾山河うたうたひつつ行かむとぞ思ふ
*幾山河=いくやまかわ

4. ある時は刃握りて中つ国トルキンの夢　我を焦がすよ

5. ある時はエンデのごとく現代を救はむ夢を　名を思ひけり
*現代=うつしよ

6. 遍歴りて若く失せにし中島のこころのあとを探る午後かも
*遍歴りて=へめぐりて
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高校時代に生まれて初めて書いた短歌を発掘しました。当時のままです。
『和歌でない歌』の形式を見て、これなら私でも書ける！と思った記憶。
が、途中からは児童書ネタに。

短歌ドリル ―朝につながれ―

1. 雪の上では挨拶をしたくなる　道行くどんな脱走者にも

2. あんなにも白一色であったのに今はすべてがはるかな水だ

3. 液晶に散る水滴のプリズムのことば歪ませちろちろ揺れる

4. うとうとと今日会うひとの名を数えまっしろな朝につながれた犬

5. もうそろそろ認めても良い頃合いだ　見上げてるんだ一メートル下から

6. そのうちに素敵なことを書くために増える手帳の白紙の重さ
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6首。白。

短歌ドリル ―アニマル・ワールド―

1. まっくろな獣をひとつ飼っておりたまに円形ハゲができます

2. アザラシの影響で5分遅れですホームに水を撒いてる尾びれ

3. 同僚がみなゾウガメになっていて日向ぼっこにいそいそまじる

4. デパートの渡り廊下で見る道を牛が七頭　行列をして

5. 最新のコピー機が置いてある隅でシュレッダー替わりに飼われてる山羊

6. 気の早いツバメのように口ずさむ真冬のレモン色のスカート

7. この窓を開けても何もないことと動けない檻の豚のこととか

8. リンクスと呼びかけてみて爪さきに自分のための色を持つ子に
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8首。パンダが最強。