届かないしらせ

届かないしらせ
しびれをきらした蜥蜴は
春期シラバスを受け取りに
決然として出かけた

ミーアキャットの頭領も巣穴を出た
子どもたちを安心させるため
保証書の再発行が必要だった

あらかじめ言っておくけれど
二匹は旅のあいだ仲直りをしなかった
なぜならけんかをしなかったし
はじめから友だちにならなかった
どころか
出会いもしなかった
そもそも二匹は
夜には家にかえったのだ

しかし
彼らがもたらしたものは
春風よりも貴重だった

ジョンは夜じゅう星を見ていた

ハレーション

もう遠いせかいのこと
聞くところには
パンジーは変わらずにこやかで
ダンディじゃないほうのライオンの
まるっこい足音もいつもどおり
ワライカワセミは常駐しているが
愛するひとは逃げてしまったらしい
ハレーションはピースマークで
フレア、フレアとささやいている
もう遠いせかいの
もう遠い日々のつづき

そうこうしているうちにこちら側では
ポストに人権が認められた
自由になったポストたちは
せかいのことを知らせるのは
やめてしまい

もう遠いせかいは
ただの遠いせかいになって
真新しく
朝を浴びているのだ

短歌ドリル －雲海－

1. 早々のカタストロフに期待して持ち出し袋に文庫を詰める

2. 生活の演習として靴をみがく　明日がくること外に行く事

3. 穴のないちくわぶのよう無理矢理に足りないままに充たされていく

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4. SU263 蜂蜜色の髪の娘と姉妹みたいに並んで座る

5. 太陽と並んで西へ向かうあいだ日よけを上げて雲を見る人

6. 同じ青いブランケットにくるまって無言で同じ空を向いてる

7. 雲海のひかりを浴びて眠る手のまろやかな線乱れるな気流

8. 水色のニットが似合う  たくさんの花の名前を知ってるひとだ

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8首。今週中更新停滞致します。

短歌ドリル ―ドライアイス―

1. 座っていて泣いて息して　わたしでも三つくらいは同時にできる

2. 起きている時が主食な獏がいてきぼうを食べてくれればいいのに

3. 白い紙はこわい、汚してしまうから　汚れてる手を暴かれるから

4. さみしさは不在のような存在でからっぽなのにあふれそうだよ

5. 安定剤をビールで流し込んでいる麻痺させられて眠れればいい

6. 集団に疎まれるのは慣れたけどあなたに疎まれるのはこたえる

7. 雪はいいな真白くふって陽をあびて暖まるまま溶けられるもの

8. ドライアイスとかに生まれたらよかったね　消えたいけれど死にたくないよ
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8首。

短歌ドリル ―むしくい―

1. もうばれてしまったんだろうあちこちに落としたままのねじのことまで

2. 欠陥を見あらわされて立っている罰ならうける　行かないで

3. ぼくはもうぼくのままでいいわたしなどになりたいなんて二度といわない

4. 聾者となりひたすら笑んで肯こう殴られてもいいきみのすべてを

5. 部品ごとにばらばらにしてあけはなつ　不良部分が見つかるか見て　

6. きっとなにかくさいにおいがしてるんだ　だれもがそっとはなれる　こころ

7. 虫食いの心臓ですが一円で売ります　買って　だれか　見てよ
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7首。何も救いにならない。