短歌ドリル ―歯を磨く音―

1. 指と指をいと艶やかにからませて影絵の薔薇よ決然と咲け

2. ポンコツめゼロイチイチイチゼロイチゼロ今語るべき言葉はどれだ！

3. わたくしの小指をつくる細胞のひとつひとつを充たすエーテル

4. ミルクチョコレートが口内に撒き散らす暴力的な甘みを欲す

5. ほらここで手品のように心臓を取り出して見せるから笑ってよ

6. 朝のニュースの向こうから聞こえてる好きなひとが歯をみがく音

7. 不純物だらけの涙であるけれど結晶させて君と張り合う

8. 女子という不思議を君は貯めているハイライトした涙袋に

9. さまざまな別れを食べてわたしもうあなたをゆるり葬り去れる

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9首。わたしのからだ。

短歌ドリル ―きれいな武器庫―

1. 47口径砲に「偽善者」と目いっぱい叫び西方へ撃つ

2. ダイヤモンドすべての影を遠ざけて磨いていたら空気に溶けた

3. ともだちが海を上手に塗ったので折ってしまおうブルーぼくのブルー

4. お化粧の下手なあの子と並びたいあたしの位置を正してください

5. 君とずっと隣り合ってる右腕はやがて正しく低温火傷

6. もう一度喧嘩をしたい、爆薬を整頓し終えた武器庫で待つ

7. ボイラーを隣に埋めてあげるから早くあなたは輪廻へおかえり

8. もういない影を相手にボクシング少しは強くなっただろうか

9. 怪獣のしっぽにつけた鈴が鳴る夜を馴らして、戦闘準備

10. バッテリーひとつ頼りに逃げ出した チカラ尽きテもワタシヲシメセ

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10首。それぞれのたたかい。

短歌ドリル ―アルバトロス―

1. 「自らの場所を自ら削り取れ」「このスプーンってダッツのだよね」

2. あの子ったら絶滅危惧種だったことなぜ真っ先に言わなかったの

3. アルバトロスが目くばせをした（今のうち）空気の精と密書を交わす

4. 野生まれの朱鷺よ夜明けを打ち鳴らせ　透明に冷えゆく群青に

5. 勲章を並べなくてもTシャツのロゴでわかるよ素敵だね、きみ

6. nowhereをnow hereに変える魔法の剣よ スラッシュ、スラッシュ、スラッシュ

7. 一日中ひかりに触れていたような平和を撒こう 三、二、一、今！

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7首。自由ということ。

短歌ドリル ―黙示録―

1. リバーシを裏返すのは楽しくて敵ばっかりだあははは、黒い

2. ひりひりと肌が覚えている場所だ－言えないけれど戻りたい場所

3. 先頭車両がかきわけた風を浴びて (あぁまたわたし死にそこねたな)
　　先頭車両の風圧受け止めて（あぁまたわたし死にそこねたな）2014.01.15改作

4. ひとりのときしか聞こえない音がある ひとりはこわい、こわい、こわいな

5. ぜつぼうはさむかったんだもうおなかもすかないけれどなんでいきてる

6. リアル脱出ゲームだなんて現実を脱出できると思うからやめて

7. 黙示録を呼んできましょう　眠る子のまるいおでこが妬ましいから

8. 英雄ぶったパンダは死んであったかな毛皮となって客間をかざる

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8首。若干やみ短歌。

短歌ドリル ―ニュージーランド―

1. 間違って進化したとは言わないが飛べない鳥は土にすがって

2. 大きすぎるたまごを腹に抱えおりゆるゆると亡びてゆく睦月

3. 死んだふりでは騙せないものたちが殖えてわたしは花を数える

4. 生きていく力の弱い遺伝子をキウィと分けあう檻の内外

5. 線路脇のあれは小さな星見小屋 今朝、蜜蜂の恋を祝した

6. 国道はむらさきの花咲き乱れ見晴るかす君、りんごをかじる

7. もくもくと草だけ食べて生きていく　もぐもぐ食べられるまで（羊！）

8. あれはきっと魚の棲めない湖だ天上みたくつめたい青で

9. 20年のちに氷河は溶け去ってきれいな青い湖(うみ)となる、悼め

10. トマト色のスポーツカーに手を振ればリアシートから剥き出しの尻！（実話）

11. ツイートは列車の窓に肘をつく虚ろな人に手をふるように

12. 冷えきったうちの空気を吸いこめばわたしは海のにおいがしてる



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あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。