ここにはいない君が

ここにはいない君が
どこにもいない君が
いないはずの君が
いなかったはずの君が
宇宙のはしっこから
こっちを見ている

連れて行こうとする
ここにいない君のいる場所へ

恐怖

目に見えるものは少ない
どの時代にも夜には

ドアの隙間の向こう
わたしを伺う悪意
冷蔵庫の低い唸りが
怨嗟の声でないとはいえない
（むしろ大いにあり得ることだ）

安穏と夢をたぐる
守りははかなく
いのちは闇にさらされる

今日も蛍光灯をつけたまま眠りに就く

精神安定剤

泣きたくなると
言葉を絞る

チョコレート
ぶどう糖
熱を

涙のかわり
言葉を絞る

コップ一杯の水に
白い粒

慰めに似た
疲労を待つ

この日々の中から何が

鏡の前に膝をつき
生きるのに必要な嘘を
顔の上に塗り重ねる　（　朝　）

外はあの　華やかだった光の上
日常のヴェールを　まとっていく
少しずつ冷たくなる　（　秋　）


どれも自分で選んだ色だ
起きたばかりより　綺麗だろう
彩度を失う　それは堕落ではない
ただ生み出すための　準備


この日々の中から何が生まれる


偽りも寒さも
全てにうなずいていきたいと思う

ねむれ

その　ゆめの　なかに
あくまが　くるよ
ぴんくの　きりと　いっしょに

だいじょうぶ

ゆめのあくまは
きみの　もの
きみが　いいこで　いるために

どすぐろい　みどりの　へどろ
ぜんぶ　すてて　くれる

ねむれ　ねむれ
わるい　もの
ぴんくの　あくまが
やってくる

ぴんくの　あくまが
たべにくる