ひとりごと

真夜中の震度２
しなるマンション
君にかけたい電話
白黒パンダのぬいぐるみ
抱きしめてこらえた

動けないまま
時計の針は重なり　別れる
昨日と同じ場所で
今日が始まる


蛍光灯の下で震え
思い出す悪夢
親指で辿る番号を
白黒パンダのぬいぐるみ
抱きしめて抑えた

可能性のまま
腐っていく
眠気に負けるのは
簡単なんだ


わかってる　わかってる


笑うために
泣きながらでも
始めるしかない
進むしかない


押しかけた通話ボタン
白黒パンダのぬいぐるみ
ぎゅっと抱きしめて　止めた

メリークリスマス

Merry Christmas
今日だけは
思い遣ること
躊躇わずにいよう

大気はしんと凍る
太陽は同じ角度で昇る
心重ねれば
暖かくなる

子どもたちへ
焼きたてのお菓子と歌を
記憶より深く
ひとひらの優しさをあげたい

Merry Christmas
ひとりなら
自分の中の自分の
思いに触れてあげよう

街の灯が泣いていても
負けないと強がっても
どこか遠くから
合図が聞こえる

疎遠になった人へ
花とちょっとした言葉を
迷子になりがちな
ありがとう、あなたを覚えてる

（今年のクリスマスは暖かくなるらしく
　それは二酸化炭素ではなく
　みんなが与えあった熱の仕業）

毎日を　強くあるのは難しい
けれど

「メリークリスマス」

今日だけは
思い遣ること
躊躇わずにいよう

暫定果実

空を吸い込んだ
地球を抱きしめた
思い出す　夢に届かなくても
湿った土をすくう
むき出しの膝をついて

泣くように笑って叫んで歌った
つま先が震えてフォルテ
空に星が巡る
街に人が満ちる


引き算で生きているわけじゃないよ
葉を落した枝が伸びるように
変わっていく
生まれたとき０でも１００でもなく
いつもこれからも１だった

子ども時代

無茶をして強いと言われ
泣けば優しいと言われる
ヒロインの狡さに
気づいていた
どこかで
あこがれていた


今になって思う
わたしの夢もまた救われたのだ

おかえり さよなら

太陽が沈むよ
中庭に生えたまっすぐの木の
てっぺんにだけ日があたる
こんな奇跡もあるのだと
からだの中の何かがほどける

遠くの笑い声は
同い年の誰か
ここに居ていいですか
聞いていたいよ

太陽が沈むよ
中庭の銀杏のてっぺんに
きんいろのぬくもり
こんな景色もあるのだと
指先に救いがふれる
太陽が沈む
太陽が沈むよ
さよならはただ明日までのことさ